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*吾々が日常活用している概念という通俗語が必ずしもカント的な意味での――それによれば之は論理的である――概念ではないことを注意する必要がある。吾々が概念の分析を行のうて来た場合の概念も亦カント的な意味での概念ではなかったであろう。又カント的意味に於ける直観も必ずしも吾々が日常用いている直観概念ではないであろう。カントの直観はそれ自身の働きに於て概念の源泉となり地盤となるというようなことがない。然るに実際直観という言葉によって理解されている通り、吾々にとっては直観は却って概念の――思惟の・反省の――根源として通用することが日常である。

学問の分類という課題は現実の、従って歴史社会的な、諸学問の分類である筈であった(初めを見よ)。そうすれば学問の諸形態の歴史的発展を跡づけ、これから学問の有つ諸時代を画すことによって、この課題が最も好く果されそうに思われるであろう。尤も歴史的発展をただそのまま叙述するのであるならばそれは学問の歴史であって、学問の分類ではないであろう。併し今云うのはかかる学問の中に一定の時代を画し、之に一定の学問の形態をあて嵌めることによって、云わば学問の歴史的分類を企てる場合を指す。之はヴィーコによって創められた。一切の歴史はヴィーコによれば、人間の理解の仕方・知識の形式に従って、三つの時代に分たれる。神祇時代・英雄時代・人間時代。従って学問も亦この三つの歴史的時期によって区分されなければならない。そしてこの三つの時期は人間の理性の発達の程度と順序とによって並べられる。それ故或る時代はこの三つの時期の何れか一つを占めるべきであり、従ってそれ以外の時期は過去又は未来にぞくす筈である。そうすれば学問も亦或る時代に於ては或る時期を占める筈であって、他の二つの時期は過去又は未来にぞくす。であるからこの場合得る学問の分類は少くとも現在現実に存在している諸学問の分類であることは出来ない。学問はその歴史的発展・進歩に於て神祇的・英雄的・人間的に分類されても、現在の学問――仮に人間的な段階にある学問――が如何に分類されるかは、少しも之によって明らかとはならない。処で吾々が学問の分類を企てる動機は、現実にそして現在――何となれば最も直接な現実は現在であるから――存在している異なれる諸学問の間の関係を知ろうとすることにあったであろう。もし仮にただ一様の学問しか吾々の眼の前に与えられてないとすれば、恐らく吾々は学問の分類を求める動機を有たないに違いない。故に今、ヴィーコの歴史的分類は恰も現在の学問を分離することが出来なかったから、この点に於て、それは学問の分類として不充分であることが指摘されなければならない。――無論歴史的分類は学問の分類として決して除外されてはならないであろう。併し歴史的分類から現在に於ける分類へ移ることは少くともヴィーコの立場に於ては――そして次に述べるであろうヴィーコの流れに入る人々の立場に立っては――不可能であることを今述べた。之に反して逆に現在に於ける分類から歴史的分類に移ることは可能である。何となればその時代々々の現在に於ける分類を吾々は歴史的に跡づけることが出来(それは学問分類の歴史である)、之に基いて要すれば学問の発達の歴史的時期を画すことも出来るからである。

こういうことばの中に筆者は自分というものの責任を明かにしている――意識してかしないでか。芥川の作品にひかれる点を率直に示しつつそれをひっくるめて客観的に批判しているそこにある独特さ。

これと同時にまた、征服階級のいわゆる教育ということが行われた。両階級の地位の不平等を維持して行くためには、もともと被征服者階級の方があらゆる点において劣等種族であるという観念を、是非とも被征服階級自身の心中に、しかと植え付けて置かねばならぬ。もし被征服階級がいささかでもこれに疑惑をさしはさむようになれば、それは社会の安寧と秩序との大なる紊乱を生ずるもととなる。そこでこの観念を強制するために、諸種の政策が行われた。いわゆる国民教育の起原にしてかつ基礎たる組織的瞞着の諸種の手段が行われた。

今日のように春らしい日差しに成って暖で、雨が降ってやんで、水たまりに日が写って居ると法悦に近いような喜びに胸を打れます。総ての人が幸福にならなければなりません。

生活の協同化とは、小にしては隣組、大にしては町内または部落、更に、一市一郡といふやうに、生活のある部分を、協力して築き営むことであります。協同献立、協同炊爨、協同託児所のごときがそれであります。これは、もとより、能率に関係があり、生産力拡充には最も必要なことでありますが、一方、国民の性格訓練としても、是非とも励行したいものであります。そこからは、現在われわれの社会生活に最も欠けている秩序の美と力とが養はれるでありませう。更にまた、日本人は、元来、人と一緒に働くことも遊ぶことも不得手であります。そのために、われわれの能力と価値とが百パーセント発揮されていないのが偽らぬ事実であります。そればかりではありません。生活の楽しい協同化は、ゆがめられた日本の家族主義を、健全に建て直す唯一の道であります。

早見どうです、気分は……?

日本の興行者は、いろいろの事情から、まつたく知識階級といふものの存在を忘れている。近代の教養と、国際的趣味は、一切、商業劇場の舞台から締め出しを食つているのである。

半分かしげた首で、すぐうなずいたが、急にぱっと眼を輝かせると、

看護婦が慌ててはいつて来る。冬菜もそれにつづく。

凡そ文学者は、普通の場合に於ても、「明日」を待っているであろうか。確実に予想され得る現実的な「明日」を待っているであろうか。

「ぢや、お酒をあげませうか、」

加来ああ、その方がいい。どうせ、秘密の話なんかないんだ。

B――その雀は俺も見た。そして俺はその雀が飛び去った後で、危く涙をこぼしそうになった。生きているうちにあの雀を再び見ることがあるかしら、とそんなことを思うと、世の中が暗くなるような気がした。空を仰ぎ、日の光を見、小鳥の声を聞くのは、俺が……この俺自身がそうしてるので、俺より他のものではない。俺があって初めて世界があるのだ。俺がなかったら、世界も何もありはしない。否、あってもないに等しいものだ。そういう俺が今死にかかっている。もう余命幾日もないだろう。何ということだ。俺は生きたい、いつまでも生きていたい。
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